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『座頭市と用心棒』 (1970年 勝プロダクション作品)

製作/勝新太郎
監督/岡本喜八
脚本/岡本喜八、吉田哲郎
原作/子母沢寛
撮影/宮川一夫
音楽/伊福部昭
美術/西岡善信
出演/勝新太郎、三船敏郎、若尾文子、嵐寛寿郎、岸田森、滝沢修
カラー シネマスコープサイズ 116分
 公開当時、時代劇の二大ヒーローである座頭市と用心棒が対決するとあって、かなりの話題になったらしい。
しかし『用心棒』は1961年の作品である。つまりこの映画は『用心棒』の公開から9年も後に作られたものなのだ。そのことからも、三船敏郎の用心棒というキャラクターがいかに強烈なものであったかを物語っている。
 そしてこの映画は、座頭市シリーズはこれ1本しか監督していない岡本喜八の監督作品であるにもかかわらず、『座頭市』シリーズの魅力がみごとに凝縮されている。
 普段の市のコミカルでおっちょこちょいな面や、あっという間に数人を斬り倒してみせるハードな殺陣、その緩急自在のテンポは、岡本監督もかなり座頭市というキャラクターを研究したに違いないことがうかがえる。あるいは岡本監督自身、座頭市映画のファンだったのかもしれない。
 そうして座頭市に関しては、座頭市らしさを徹底的に追求している一方で、三船敏郎演じる用心棒のキャラクターの方はというと、こちらはかなり岡本喜八流にアレンジされており、黒澤明版用心棒の桑畑三十郎とはずいぶんと違う、人間臭く俗っぽい男に描かれている。もちろん黒澤明版の用心棒はああしたキャラクターでなければならなかったわけだが、後になってみると無欲な正義のヒーロー的な部分が強すぎる気がしたことも確かである。それが、今回は欲もあれば色もある生臭い男としての部分が描かれていて、それがまた何とも魅力的なのである。
 またその演出意図を理解して演じ分けた三船敏郎の役者としての力量もすごい。
 ただ惜しかったのは、三船演じる用心棒・佐々大作の正体が、幕府の公儀隠密であるということを、かなり早い時点で明かしてしまったことである。これによって、この男の謎めいた魅力が一気に弱まってしまったのは残念だった。

(2001/09/13)

「座頭市」シリーズ(全26作)
座頭市物語(1962)
続・座頭市物語(1962)
新・座頭市物語(1963)
座頭市兇状旅(1963)
座頭市喧嘩旅(1963)
座頭市千両首(1964)
座頭市あばれ凧(1964)
座頭市血笑旅(1964)
座頭市関所破り(1964)
座頭市二段斬り(1965)
座頭市逆手斬り(1965)
座頭市地獄旅(1965)
座頭市の歌が聞える(1966)
座頭市海を渡る(1966)
座頭市鉄火旅(1967)
座頭市牢破り(1967)
座頭市血煙り街道(1967)
座頭市果し状(1968)
座頭市喧嘩太鼓(1968)
座頭市と用心棒(1970)
座頭市あばれ火祭り(1970)
新座頭市・破れ!唐人剣(1971)
座頭市御用旅(1972)
新座頭市物語・折れた杖(1972)
新座頭市物語・笠間の血祭り(1973)
座頭市(1989)

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