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『座頭市牢破り』 (1967年 勝プロダクション=大映京都作品)

製作/永田雅一
企画/伊藤武郎、宮古とく子
監督/山本薩夫
脚本/中島丈博、松本考二、猿若清方
原作/子母沢寛
撮影/宮川一夫
音楽/池野成
美術/西岡善信
出演/勝新太郎、三國連太郎、西村晃、浜田ゆう子、藤岡琢也
カラー ワイドサイズ 95分
 開巻、バーンとクレジットされるのは“勝プロダクション第一回作品”の誇らしげな文字。
 このクレジットに象徴されるように、この映画は「良くも悪くも」まさに勝新の座頭市が主役の、勝新による勝新のための映画になっている。
 まず「良い」方は、とにかくあらゆるシーンにおいて、座頭市がどうすればカッコよく見えるかが、徹底的に考えられていることだ。悪役が目の見えない市をあざむこうとする卑怯な手段に出るが、市がそれでも悪役をバッサリと斬り捨てるなどという殺陣は、「座頭市」でなければ描けない痛快なシーンである。
 冒頭、血にまみれた生き方をしてきた座頭市が、刀を捨てた武士・大原秋穂(鈴木瑞穂)と出会い、人を斬ることの無意味さを説かれて、複雑な表情をするシーンなど、もう、あざとすぎて背中がムズムズしてくるくらいに市の生き方を象徴するシーンになっている。「ああ、狙ってるなー」と言った感じ。
 もっとも、そうした意図が見えていながらも、思わず「うおおっ! 座頭市カッコイイ!!」とシビレてしまうのは、山本薩夫監督の、ハードボイルドでスタイリッシュな演出のたまものだろう。
 さて、それでは「悪い」方はどこなのかというと、実はそれも同じ部分なのだ。つまり勝新演じる市の見え方に気を配りすぎたあまりに、全てのシーンがそれ以外の登場人物の役柄を犠牲にしてしまっているのだ。とにかく、他にも三國連太郎や西村晃など、魅力的な配役を多数揃えていながら、彼らの魅力を生かしきれなかったところは実に惜しい。先に名を出した大原秋穂も、描き方次第では市の人生とは対照的な生き方を選んだ気骨ある武士として、もっと深い人物になり得たのになぁ……。
 ところでタイトルに「牢破り」とあるから、きっと座頭市が牢に入れられてそこから脱出する話なんだろうと考えていたら、実際に牢に入れられるのは、農民を扇動して一揆を企てたとされた大原秋穂さんなのだった。

(2001/10/08)

「座頭市」シリーズ(全26作)
座頭市物語(1962)
続・座頭市物語(1962)
新・座頭市物語(1963)
座頭市兇状旅(1963)
座頭市喧嘩旅(1963)
座頭市千両首(1964)
座頭市あばれ凧(1964)
座頭市血笑旅(1964)
座頭市関所破り(1964)
座頭市二段斬り(1965)
座頭市逆手斬り(1965)
座頭市地獄旅(1965)
座頭市の歌が聞える(1966)
座頭市海を渡る(1966)
座頭市鉄火旅(1967)
座頭市牢破り(1967)
座頭市血煙り街道(1967)
座頭市果し状(1968)
座頭市喧嘩太鼓(1968)
座頭市と用心棒(1970)
座頭市あばれ火祭り(1970)
新座頭市・破れ!唐人剣(1971)
座頭市御用旅(1972)
新座頭市物語・折れた杖(1972)
新座頭市物語・笠間の血祭り(1973)
座頭市(1989)

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