投球の力強さをアピールする手段としてバットを折ってみせる、というのはよくある手だ。
本書でとりあげた作品のうちいくつかの中から、作中で折れたバットの数を数えてみた。何本折れたかはっきりしない場合もあるので概算ではあるが、結果は『アストロ球団』37本、『ドカベン』10本、『野球狂の詩』8本、『黒い秘密兵器』7本、『ちかいの魔球』6本──。
『アストロ球団』がダントツでトップだが、これはジャコビニ流星打法という、バットを折って飛ばす打法が出てくるため。しかしそれだけではなく、ロッテの代打者リョウ・坂本が素振りをしただけでいっぺんに6本も折ったりしている。
しかし素振りをしただけでバットを折ったということでは、『黒い秘密兵器』に登場する柳生宗範の方が先だ。別にどっちが先でもいいけど。
また『アストロ球団』では、ビクトリー球団の貴公子・バロン森が、「道具に頼るな」と言って仲間に檄をとばし、まとめて7本のバットをたたき折っている。因みにこのバロン森という男、貴公子なのに、ホームベースへ突入する際に「オリャオリャ〜ッどけどけ〜っ もたもたしとってドタマかちわられてもしらんぞーっ」などと叫んだりするのですが、ホントに貴公子?
『ドカベン』で殿馬一人が見せた秘打・花のワルツは、バットを地面にたたきつけてボールを打つ打法で、殿馬くんは「打つたびにバットを1本折るのが欠点」とつぶやいている。その『ドカベン』に「金属バットでなければ折れていた」というセリフがあるが、本当に金属バットを折ってしまったのが『かっとび童児』の猿飛童児と、『わたるがぴゅん!』の与那覇わたる。もはや人間技ではない。『父の魂』の南条隼人には、早く父の遺志を継いで折れないバットを作ってもらいたい。