『巨人の星』のキャラクターはみんなよく泣くが、実は星一徹が一番涙もろいという噂がある。
星一徹は、星飛雄馬が涙でにじんだ手紙をよこした時、「ばかめ! おまえが涙を流すのはマウンドの上だけとこの父は教えたはず!」と怒るが、それが飛雄馬の初恋の女性・日高美奈が余命いくばくもないことを伝える手紙であると知ると自分もボロボロと泣く。また姉・明子が星飛雄馬とマンション暮らしを始めると言って家を出てしまった時は、押し入れから大リーグ=ボール養成ギプスを引っぱり出し、そのばねを弄びながら泣いた。
星飛雄馬は、左門豊作が貧しい兄弟たちのどん底生活を野球で支えていることを知った時、涙で目が曇って暴投してしまう。また大先輩・金田正一が練習中に負傷した時も金田正一の健気な態度にプロ根性を見て感動し、涙で目が曇って暴投してしまう。もっともこの2つはマウンドの上で泣いたのだから父の教えに背いたことにはならないが(そうか?)、新聞記者に囲まれた星飛雄馬が巨人の星≠ニ呼ばれて、いきなり「ぼ、ぼくの…いままでの人生を支配してきたそのことばのひびき…」と言っていきなり泣き出したのはいかがなものか。やはり父のスパルタ教育が完全なトラウマになっていたんですねぇ。
巨人軍が台湾遠征に向かうときにも星飛雄馬は飛行機の中でいきなり泣き出す。「生まれてはじめての海外旅行は、同時に生まれてはじめて星飛雄馬が父一徹のふところから飛び出したことなんだ」とつぶやきながら…。しかしいくら現在ほど海外旅行が一般的じゃなかった(観光目的の海外旅行が自由化されたのは昭和39年4月から)とはいえ、たかが台湾旅行で感動してたらキリがないんじゃないですか。息子をここまでファザコンにしてしまうとは…恐るべしスパルタ親父!!