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GUNS&ミリタリーおもちゃ箱

第6回:フーリー軍曹って誰だ!?


キャプテンアクションのフーリー軍曹。悪人顔の上に瞳が描いてないのでデスマスクみたいに見える。

10の顔を持つ男キャプテンアクション

全身21か所の関節が可動するアクション人形G.I.ジョーは、1964年にアメリカのハスブロ社が発売、大ヒットして多くの亜流を生んだ。しかし、その中でまともに日本に輸入されたのは、今回紹介する、このキャプテンアクションくらいだろう。キャプテンアクションは、アメリカのアイデアル・トイ社が1966年に発売したG.I.ジョーと同種のアクションフィギュアだ。
キャプテンアクションの“ウリ”は、上の写真のように人形の頭にすっぽりマスクをかぶせてコスチュームを着替えさせると、10通りのキャラクターに変身させられるということだった。マスクとコスチュームは当時の価格で1セット900円。人形付きのものが1700円だった(素顔のキャプテンアクションはマスクがないから1600円)。
G.I.ジョーのようにアイテムを別売りしてないので、次から次へと際限なく買わされる危険性がなく親のサイフもゆるむのか、後発ながら、当時、G.I.ジョーよりもキャプテンアクションを買ってもらう子供もけっこう多かった。
ぼくも、上野の松坂屋デパートで母親に「1つだけしか買わないから」とねだってキャプテンアクションのスーパーマンを買ってもらったのだった。
今回、このスーパーマンをおもちゃ箱から引っぱり出してみたら、箱に同梱さ れていたカタログに、買った当時、ぼくが次に欲しいキャラクター・コスチュームの順番を鉛筆で書きこんであるのが見つかった。「1つだけだから」と言って買ってもらったくせに、しっかり全種類そろえる気でいたのである。いつの時代も子供はしたたかだ。

素顔のキャプテンアクション。ちょっち情けない。

マスクをする。スパイ大作戦(知ってる?)みたいだ。

これでもう、どこから見てもフーリー軍曹だ!!(嘘)
その順番通りに10種類を列挙してみると…
スーパーマン
フラッシュゴードン
アクアマン
ファントム
キャプテンアメリカ
ローンレンジャー
ステーブキャニオン
バットマン
サージャントフーリー
キャプテンアクションとなる。
この順番でぼくの趣味を云々しないよーに(笑)。

スーパーマンセット。変な小道具よりC・ケントの顔と服を付けて欲しかった。

もう一人のミリタリーキャラ“ステーブキャニオン"。しかしバックの写真は自衛隊のF86Fだ。
ところでスーパーマン、バットマンあたりは超有名だからともかくとして、それ以外のキャラクターはほとんど日本では知られていないんじゃないだろうか。『フラッシュゴードン』は10年ほど前にリメイク映画があったし、『ローンレンジャー』も昭和30年代にテレビ放映されて人気があったから知ってる人は知っているだろうけど…。今回紹介しているサージャントフーリーだってぼくは全く知らなかったもんね。 というわけで、結局買ったのは最初のスーパーマンだけで、あとは友達にコスチュームを借りるなどしてけっこうチープに楽しんでいたのである。
ここの写真のフーリー軍曹は、中学になってから、遊び飽きた友人から安く譲ってもらったものである(ぼくだけは中学になってもオモチャやまんがを集めていたってコトね。トホホ…)。

人間は顔じゃないけど人形は…?

ぼくが子供のころ、まだ親の人間教育は厳しかった。どこの家庭でも「人を顔や身なりで判断してはいけない」と教えられていたもんである。
が、G.I.ジョーゴッコにフーリー軍曹を持ってこようものならば、即、そいつは悪役決定だった。だってフーリー軍曹って悪人顔なんだもん!それじゃあってんで、マスクをはぎ取り、キャプテンアクションの素顔で勝負しようとしても、これがまた弱っちい顔だから、今度は捕虜にされて拷問される役が回ってくる。どうもアメリカ人の考えるヒーロー像と日本人の考える正義の味方のイメージにはギャップがあるようだ。
だからぼくは、みんなと遊ぶときはいつもG.I.ジョーの服とアイテムを借り、スーパーマンの顔マスクをつけて遊んでいた。これならG.I.ジョーチームもぼくの人形を仲間として認めてくれたのだ。
G.I.ジョーとキャプテンアクションを比較してみると、身長はわずかにキャプテンアクションの方が高いくらい。可動部分もほとんど同じだが、G.I.ジョーにある二の腕の可動部分がキャプテンアクションでは省略されている。それでも両者ともほとんど同じポーズを取らせることができるので、ハッキリ言ってこの二の腕の可動部分は必要ないのかも。

夕陽の彼方に消えた人形オモチャたち

先輩G.I.ジョー(右)とツーショットどう見ても軍曹の方がオヤジ。 筋肉のつき方が微妙に違う。ちょっとグロ(笑)。
このG.I.ジョー人気、ぼくの住んでいた東京の下町・葛飾では、60年代の終わりに一瞬だけパッと流行し、ほぼ半年くらいですぐにすたれてしまった。
70年代に入ると『仮面ライダー』のヒットと共に、ソフトビニール人形の人気が再燃する。本郷猛の素顔にライダーのマスクをかぶせられるこのソフビの仮面ライダー人形は、包装のタグまで本物そっくりに複製されたニセモノが大量に出回り、社会問題化するまでになった。
さらに数年すると、こんどは変身サイボーグ1号、ミクロマン、タカラ版G.I.ジョーなどが人気となり、和製アクションフィギュアの時代がやってくる。
しかし、数年前にリバイバルしたコンバット・ジョーやニューG.I.ジョーは、日本ではそれほどヒットもせずに消えていった(今ではプレミアが付いているらしいが)。両者ともかつてのG.I.ジョーよりもふた回りほど小さく、マーケティング評論家ならば「日本の住宅事情にピッタリ」と言いそうなのだが…。
実のところ、これらには昔の大きかった人形ほどの存在感がなく、かといってミクロマンのような縮小世界ならではの世界観もなかったからだろう。
鉄道模型ならHOゲージ、戦車プラモなら35分の1と、どうやらオモチャには所有感を満たしてくれるジャストサイズというものがあるようだ。


3点共左がG.I.ジョーの物。フーリー軍曹の靴は左右対称。ヘルメットも軍曹のが安っぽい。
だが拳銃と手留弾はデカイぞ。さぞかしアレもデカイんだろうな。なんて…下品なアメリカンジョーク…すいません…。



(c)IDEAL TOY CORPORATION

(「コンバットコミック」'94年7月号掲載)

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