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GUNS&ミリタリーおもちゃ箱

第5回:回る回るよソノシート


▲シングルレコードは通常45回転/分で再生するが、ソノシートはLPと同じ33回転/分。ソノシートを聞くと針が痛む、と親に嫌がられながら聴いたのだ。


▲数番組が収録されてお得に見える主題歌集だが、主題歌しか入ってない上、好きじゃない番組も混ざっていたりして飽きるのも早い。

キミはソノシートを知っているか!?

CD全盛の現代。レコードさえも過去の遺物となりつつあるところへ、今回はソノシート≠ェテーマである。

▲雑誌「少年」昭和40年8月号の次号予告。レコードが憧れだったこの時代。紙製の手動プレーヤー(ソノシート付き)が付録に!!
ソノシートというのは、厚さが0・2ミリ、赤や青に着色されたペラペラの塩化ビニール製レコードのことだ。昭和20〜30年代生まれにはソノシートといえばすぐに通じるが、実はソノシートは朝日ソノラマの登録商標で、一般名称としてはフォノシートが正しいらしい。
まあ、セロテープ、ウオークマンなどと同様に、一般名称よりもソノシートの方が通りがいいから、ここはあえてソノシートで通させていただくことにする。
さて、ソノシートを知らない方のためにもう少しソノシートの説明を続けるので、昭和20〜30年代生まれの方は、次の小見出しまで読みとばしてください。
ソノシートが全盛を誇ったのは昭和30年代後半から40年代。ビデオどころかラジカセすら影も形もない時代だ。いつでも好きなときにテレビ主題歌が聴けるソノシートは、子供にとって初の個人メディアだったのである(ちょっと大げさ)。
市販されていたソノシートはたいていシングルレコードサイズで、20ページほどの簡単な絵物語を収録した小冊子が付いて定価280円前後。レコード店のほか、書店などにも並べて売られていた。
内容は主題歌・挿入歌に加えて十数分のミニドラマを収録したものが一般的で、 中にはテレビと全く同じキャスティングでオリジナルストーリーのミニドラマを録りおろした豪華なものもあった。

戦記まんがブームは幻か


▲0戦はやと第1集はイラストもストーリーもしっかりしている。戦闘機の解説が付いて、ソノシートも2枚組とお得だ。
テレビとソノシートが流行した昭和30〜40年代は戦記まんがの名作が多く生まれた時代でもあった。今考えると、旧日本軍がカッコよく活躍する話を子供に見せるなんて、社会的批判が心配になってしまうが、それについては、戦記コミックを紹介する時に改めて考えてみたい。

▲0戦はやと第2集。敵の秘密兵器は何と空飛ぶ戦車!!同じ280円なのに、第1集とくらべて内容がお粗末な上、ソノシートも1枚しか付いてなくてちょっと寂しい。
左の写真のソノシート『0戦はやと』も、そうした戦記まんがの秀作の一つだ。原作は辻なおき。テレビアニメはPプロの製作で、昭和39年1月から10月まで全39回にわたってフジテレビ系で放映された。南方イロイロ基地を拠点とする東隼人ら爆風隊の面々が零戦を駆り敵軍と戦う物語だが、アメリカという言葉は一言も出てこない。ソノシートでも、最初に発行された『敵空母を撃沈せよ』では敵が米軍のマークを付けていたのが、第2集では架空のマークに変わっている。
ストーリーも、リアルだった第1集から第2集は一転、メチャクチャだ。いきなり空飛ぶ万能戦車が登場!と思ったら、それと戦う主人公たちの戦法が実に情けない。落下戦法とかいって零戦からパラシュートを着けて飛び降り、戦車に飛び移ろうとする。おいおい、いくらなんでもそれは無理だぞ!!
哀愁を帯びた主題歌の作詞と、全話のストーリーを手がけたのは脚本家の倉本聰。今や『北の国から』などのシナリオで大家となってしまったが、当時はまだ若手で、日活などでプログラムピクチャーの脚本などを手がけていた。


▲ソノレコード社の『サブマリン707』。表紙の潜水艦と中に出てくる潜水艦の絵が違う!!


▲ソノレコード社は他にも、『スーパージェッター』など他社で出してる作品を重複して出したりしていた。

怪しさ爆発版権無法時代!?

お次はちと怪しげな、ソノレコード社発行の『サブマリン707』。テレビ主題歌と銘打っているが、実はオリジナルのまんが『サブマリン707』(小沢さとる作)はテレビ化されていないのだ。
当時ソノシートは、テレビになっていないまんがまでも独自に主題歌を作詞作曲しテレビ主題歌≠ニして売ることがよくあった。ミリタリーではないが、ぼくの知ってるものではアニメ化されていない『ストップ!にいちゃん』のソノシート、アニメ化以前に発売された『おそ松くん』のソノシートなどがあった。最近のイメージアルバムと同じだが、堂々とテレビ主題歌≠ニ謳ってるところがやっぱりうさん臭い。

▲▼『少年忍者部隊月光』。表紙には震電、中ページには特殊潜航艇・甲標的が出てくるなどマニアック。しかし現代を舞台にしたテレビ版とのギャップは大きい。
このソノシート、中身もかなりうさん臭く、少年サブマリン隊という、オリジナルの『707』には全く登場しない謎のチームが出てきて、怪潜水艦と戦うというストーリー。登場人物の名前は一切なく、原作者名はおろか、主題歌の作詞作曲者名さえも書かれていない。
しかしこのソノシート、友人にも何人か持ってた奴がいたし、当時はけっこう出回っていたらしい。当時、ガッカリし た少年も少なくなかったんだろうなぁ…。

テレビと違うなんてアタリマエ

最後はオリジナル通りだったから混乱させられた『少年忍者部隊月光』のソノシート。吉田竜夫の原作まんがは太平洋戦争中が舞台だったのだが、実写で製作されたテレビ版『忍者部隊月光』(少年≠ヘ付かない)は現代が舞台となっていた。ソノシートは…というと、主題歌はテレビの主題歌そのままで、小冊子の絵物語は原作通り太平洋戦争中のお話。オリジナルストーリーは声優によって録りおろされている。因みに主人公・月光の声はドラえもんの大山のぶ代だ。テレビ作品は国際放映の製作で、フジテレビ系で昭和39年1月から41年3月まで119回放映された。


(c)辻なおき、竜の子プロ、少年画報社(順不同)

(「コンバットコミック」'94年6月号掲載)

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