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柴又名画座
No.128
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『天城越え』
(1983年 松竹=霧プロ提携作品)
製作/野村芳太郎、宮島秀司
監督/三村晴彦
原作/松本清張
脚本/三村晴彦、加藤 泰
撮影/羽方義昌
音楽/菅野光亮
出演/田中裕子、渡瀬恒彦、平幹二朗、伊藤洋一
カラー ビスタビジョンサイズ 99分
新人監督・三村晴彦が、師とあおぐ名監督・加藤 泰と組んで松本清張の原作を共同脚色し完成させた力作。
ある日、街の小さな印刷屋に、ひとりの元刑事が、40年前の事件の調査資料の印刷を依頼に来る。天城峠で起きた土工殺人事件。その原稿を読んだ印刷屋の男は、40年前のあの日、天城峠で起こった出来事をゆっくりと回想しはじめた。
松本清張映画の傑作
『砂の器』
にも通じる、現在と過去が巧みに交錯するシナリオは見事。決して観客を混乱させず、へたに気をもたせるでもなく、奇をてらっているわけでもない。そんな自然な脚本がこの映画の命だろう。
この映画は、公開当時、劇場で見ているのだが、そのときの記憶では、雨にけむる峠の緑が鮮やかだった印象があったのだが、ビデオではさすがにそうした部分が見えず、残念だった。
役者としては、田中裕子が演じる、置屋を足抜けしてきた遊女の演技が絶品。目元に哀しみをたたえながらも、精一杯突っ張って生きているたくましい女を熱演している。
雨の中、警察に連行されていく彼女が、少年と目で会話するシーンは、彼女以外のキャスティングは考えられない。
ただ、欲を言うと、全編がまったく野村芳太郎監督の作風そのままに感じられ、これがデビュー作である三村晴彦の妙に老成した演出に新鮮味が感じられないことが残念だった。野村芳太郎監督、今回は製作としてクレジットされているが、やっぱり松本清張映画だし、いろいろ口を出してしまったんでしょうか。
(2000/05/05)
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