2002/09/24(現地時間)

 7:00、自然に目が覚めた。これも時差ボケか? トイレの窓からリスが木の芽を食べているのが目の前で見えた。感激してデジカメで撮影。
 しかしこれを柳田さんに話したら「こっちではリスは害獣なんですよ。狂暴なので、うっかり手を出すと噛まれますから注意してください」と言われた。
 確かに、およそ2mの距離からぼくが撮影してることに気付いても、一瞬、動きを止めただけで、すぐにまた食事を再開しはじめたから、相当、強気なリスくんだったことは間違いない。

 10:00、昨日、テイクアウトした寿司を朝食に食べ、N川さんの運転する車でホテルを出発、日本人街へと向かう。実は緒川集人さんの情報で、ここロスアンゼルスの本屋に『マジック・マスター』のコミックスが置かれているというのだ。ドヤドヤと10数人が本屋へなだれ込み、店員が驚いているのもかまわず、「あった! あった!」と騒ぎまくり、みんなで写真を撮ったりして、結局、この店では柳田さんが新聞を1部買っただけということで……ごめんなさい、紀伊國屋の店員さん!!
 それにしても、ぼくより先に著書がアメリカへ渡って、こうして店先に並んでいるのを見るとうれしくなりますね。そして、その後の車内では、「次は海外版へ進出だーっ!」と盛り上がったことは言うまでもない。

 続いて柳田さんに案内されたのはメキシカンマート。およそ200mくらいの路地に、左の写真のような、南米系の人が経営するエスニックな土産物屋がギッシリとひしめいている。
 つまりは観光地と言ってしまえば観光地なんだけど、ちょっと路地の奥を覗くと、そこに住んでる人が普通に生活している様子が覗けたりもする。また街の片隅では、民族衣裳を着たメキシコ人のおばさんが、花壇の柵に腰かけて、流しのギター弾きが歌う哀しげな歌に耳を傾けながら、ポロポロと涙を流していたりするのもすごくいい。とにかくいっぺんで気に入ってしまった、とても居心地のいい居場所である。


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 この写真の駄菓子屋っぽいお店では、古新聞で包まれたひとつ 1$ の GRAB BAG(福袋)を2つ購入した。開けてみると、1つの新聞紙には、水に入れると600%に膨らむというグロテスクなエイリアン人形が、そしてもう1つの新聞紙には、両側の先端が鋭く尖っている、危ないったらありゃしない爪楊枝(笑)がひと束入っていた。こんな素敵な中味が入ってるんだったら、もっとたくさん買っておくんだった! 他の包みにはいったい何が入っていたんだろう……。残念!!
 因みに、この店先にどんな品物が置いてあるのか、気になる人は、写真をクリックすると、拡大画像が表示されます。ねーっ、くだらなくて面白そうなガラクタが山ほど並んでるでしょ!! 帰りに荷物が重くなるのを気にしなければ、片っ端から買いたくなってしまいます。

 別の駄菓子屋では、注射器型の容器に入った PELON PERO RICO というお菓子を、1個 25¢で3個購入。ところがこの先端から押し出されてくるゲル状の物体を、ほんのちょっぴり舌の先に付けてみただけで、吐き気を催すほどの激マズ!! いったい中味は何なのだ???

 そしてさらに別の店では、Jumping Beans(飛び跳ねる豆)なるものを購入。これは、豆の中に蛾の幼虫が入っていて、暖めたり日光に当てたりすると、その幼虫が動くために、豆が転がってコロン、カランと音を立てるという奇妙なおもちゃ(?)である。1ケースに5粒ほどの豆が入っていて75¢。しかし生き物を持ち帰ることはできないので、残念ながら帰国前にリリースしてしまった。孵化すると無害な蛾になると書いてあったから公害にはならないでしょう。もしかしたら、今ごろはロスアンゼルス某所の生け垣のあたりを飛んでいるかも。

 メキシカンマートの一角で、気取ったポーズで休憩する日高さん。この路地は、全体のおよそ80%が、上の写真のように、商品が隙間なくディスプレイされたお土産屋さんで埋められているんだけど、そんな中に、たまにポツンとこんな空間があったりするのが面白い。
 それに、商品を所狭しと並べているお土産屋にしても、商売っ気があまりないというか、どことなくのんびりしていて、この狭い空間を、何となくゆったりした時間が流れているのを感じるのだ。ホントにいい場所ですよ、ここは。

 チャイナタウンで飲茶の昼食を取った後、あわただしく車を飛ばして向かった先は、ディズニーランド・パーク!! 昨日のユニバーサルスタジオに続いて、本場のエンターテインメントを堪能するという、重要な目的を持った、これも仕事である。仕事。
 入り口を入ってまず思ったのは、入ってすぐのところにあるショッピングモール=メインストリートU.S.A.が、まるで普通の街並みのようにゆったりとしているということだ。東京ディズニーランドにも入り口を入ってすぐのところにショッピングモールがあるのはここと同じだけど、東京がかなり華美な演出がなされているのとは、ずいぶん雰囲気が異なる。
 それに、ここには東京ディズニーランドと同じアトラクションもたくさんあるが、その中味は、どれも日本とは微妙に違うのだと言う。さて……。

 このディズニーランドのアトラクションの中で、最も面白かったのが、このインディ・ジョーンズ・アドベンチャーである。四輪駆動車を模した乗り物にのって、インディ・ジョーンズの世界を巡るのだが、この車の揺れ方がハンパじゃない。思わず笑っちゃうくらい上下前後左右に激しくシェイクされるのだ。この過激さはかなりキています。
 N川さんはこの刺激が病みつきになっちゃったらしく、後でぼくがお土産を買っている間に、また伊東くんたちを誘って乗り直していたらしい。
 実際、東京ディズニーランドのアトラクションと、どこが違うのかというと、全体的にスケールがデカイのである。カリブの海賊もビッグサンダー・マウンテンも、移動する距離が長くて施設の規模が大きい。それに例えばカリブの海賊だと、途中で滝のような段差を落ちるところがあるけど、日本だとこれが1ヵ所なのに対して、こちらは2ヵ所ある。
 そして最も大きな違いは、どのアトラクションも空いていて最高でも30分待ちくらいで乗れてしまうということだ。日本じゃ平日でもこうはいかないでしょう。
 それから、ここもユニバーサルスタジオと同じく、チケットがパスポート1種類のみなので、アトラクションごとにチケットを見せる必要はない。
(正確には、ディズニーランド・パークと隣接している、絶叫マシン系の施設=ディズニー・カリフォルニア・アドベンチャーとの共通パスポートがあるので、チケットは2種類ある)。

 16:30、自由時間の後の待ち合わせは、メインストリートU.S.A.の一角にあるマジックショップ。実は、この店と同じようなマジックグッズの専門店は、ユニバーサルスタジオのシティウォークにもあった。世界的に有名な遊園地とセットになってマジックショップがある。この事からも、アメリカでのマジックの人気の高さと、ショーマンとしてのマジシャンのステータスの高さを証明するものと言えるだろう。
 因みに、このマジックショップで、店員さんに乞われて緒川集人さんがコインマジックを披露。そしたらその店員さんは目を丸くして「Fantastic!!」「 Excellent!!」を連発。激しく感動しておりました。それを見てると、ぼくも何だか誇らしかったりして(笑)。

 18:00、暮れなずむ街を急ぎハリウッドへと戻る。
 実は今日はまだ終わったわけではないのだ。これから、この旅行で最後のマジックキャッスルの取材が残っているのである。

 一時は間に合わないかとも思われたが、フリーウェイが比較的空いていたために、予定より早くホテルへ戻ることができた。
急ぎジャケットに着替えて、かみやさん、N川さん、日高さんの3人と共に、マジックキャッスルへと向かう。今日の夕食は、ここのディナーを予約してもらっていたのである。ぼくは、かみやさんお薦めのリブステーキを食べた。かみやさんは「前に来た時はもっとおいしかったのに〜、今日はちょっとイマイチだった、ごめんね」とおっしゃっていたが、ぼくは充分美味しくいただきました。それに古いお屋敷で食べる静かなディナーというのも、アメリカ滞在最後の夜にふさわしいリッチなものでありました。
 ディナーの後は、いくつかのマジックを見た後、パレス・オブ・ミステリーで開かれる今夜のメインショー、女性マジシャンジュリアナ・チェンのステージを見た。小柄な女性ながら、大きな舞台をいっぱいに使った演技が見事である。
 彼女はショーのラストで、手の中からカードが無数に出てくるというマジックを披露。その客席にバラ撒かれたカードは、何と彼女のオリジナルで、最後は観客が思い思いに拾って記念に持ち帰っていた。ぼくも1枚、ハートのクイーンを記念にいただいた。

 しかし、実はこの晩のメインステージは、この後に待っていたのだ!!
 アンドリュー・ゴールデンハーシュ氏という若いマジシャンが、柳田さんの口利きで、ぼくらだけのために、特別にマジックを披露してくださることになったのだ。このアンドリュー氏は、いつも辛口の柳田さんが、珍しくその才能を絶賛する人なので、ぼくの期待もパンパンにふくらむ!!
 時間はすでに22:00を回って、朝から活動しているぼくは、すでに半分眠りかけていたんだけど、その眠気も一気に吹き飛んでしまった。
 ぼくらは、平日で時間も遅いためにほとんど人気ひとけのなくなったマジックキャッスルの中で場所を探し、地下にあるクロースアップテーブルの前に落ち着いた。そして静かにアンドリュー氏の演技を待った。
 アンドリュー氏は「何だか緊張するなぁ(英語)」などと言って照れながらも、カードとコインを出して、ゆっくりと演技を始めた。
 最初は、身内に接するような親しさをこめて、ゆったりとした現象をひとつ、ふたつ。ところがその目がだんだんと真剣味を増していき、それにつれて演技も迫力を増していく。
 それにしても、こんなプロ中のプロが、その演技をわずか5〜6人のぼくらだけのために見せてくれているとは、何とぜいたくな事だろう。
 そんな感慨に耽るうちに、演技は最後のクライマックスを迎えた。ラスト、アンドリュー氏の手の中でお札が折り畳まれ、折り紙のチョウができ上がった。と、そのチョウが突然、本物のチョウに変わり、部屋の中を舞い始めたのだ!!
 結局、この晩、ぼくはまるで夢を見ているかのような気分のままで、アメリカ滞在最後の夜の、マジックキャッスルの取材を終えたのだった。


2002/09/26(日本時間)

 こうして、4泊6日のアメリカ取材は無事に終わった。
 スケジュールがギッシリで、かなり慌ただしい旅行だったが、それだけの収穫のある旅だった。
 ところでぼくは帰国して、ひとつ心残りなことがある。それはマジックキャッスルのバーテンに借りができてしまったことだ。
 取材の最初の晩、ぼくがキャッスルのバーでホットコーヒーを注文したら、なぜかそのバーテン氏「金はいらない」と言うのだ。ホントにお金を払わなくていいのか? そう思いながらも言葉の壁があるから、それ以上、込み入った質問はできない。
 それをかみやさんに言うと、「アメリカ人は、よくおごってくれたりするのよ。黒沢さんきっと気に入られたんです」なんて言うから、ま、いっか、とその日はバーテン氏の言葉に甘えることにした。
 ところが、最後の晩、またこのバーに立ち寄ってぼくがコーラを注文すると、件のバーテン氏、聞き間違えたのかわざとなのか、またホットコーヒーを持ってきて、さらにまたお金を払おうとすると、「NO! It's FREE!!(金はいらん、タダだよ)」と言いきるのである。負けた! 完敗だ!! そう思ったら何だかおかしくなって、ぼくひとりで爆笑しちゃったんだけど、当のバーテン氏はニヤッと口元を歪めただけで、すぐさま他の客の方へと忙しく立ち去ってしまった。
 このバーで注文したドリンクは、キャッスル内ならどこへでも持ち運べるので、ぼくも仕方なく、お金を払わないままホット用グラスを手にバーを後にした。
 そして飲み終えたグラスも、キャッスル内ならどこへでも置き捨て(?)OKなんだけど、今夜がアメリカ滞在最後の晩なので、気になったぼくは、グラスを返しにまたバーへと向かった。そしてバーテン氏にグラスを返しながら、日本語で「ごちそうさま!」と言うと、バーテン氏、また口元をゆがめてニヤリ。うーむ、まるで江戸っ子のようなアメリカおやじだぜ。次にここへ来たときには、絶対に料金の2倍のチップを払ってこようと思う。

 ところで心配していた時差ボケがどうなったかと言うと、帰国した当初は、大丈夫そうに思えたんだけど、その後やっぱりなってしまった。そして結局、回復までにおよそ10日間。これも含めて海外旅行のフルコースを堪能した旅でありました。

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