『鉄火場の風』 (1960年 日活作品)

製作/水の江滝子
監督/牛原陽一
脚本/熊井啓
撮影/姫田真佐久
音楽/小杉太一郎
美術/木村威夫
スチール/斎藤耕一
出演/石原裕次郎、北原三枝、芦田伸介、赤木圭一郎、宍戸錠、東野英治郎
カラー シネマスコープサイズ 89分
 先日柴又名画座で上映した『錆びたナイフ』に続き、これも石原裕次郎主演のヤクザ映画である。
 英次(石原)は、呉羽組組長殺しの罪で3年間の刑期を終え、網走刑務所から出所してきた。後釜として呉羽組組長の座に居座った高木(芦田)は英次を破門し、英次の恋人だった那美(北原)をも自分の情婦にしていた。
 英次は、自分を無実の罪におとしいれた芦田の企みを知り、鉄火場に乗り込む。

 前にも書いたように、裕次郎主演のヤクザ映画はマジメで深刻な作品が多く、遊びが少なくて息苦しい場合が多いんだけど、この映画に関しては、カタギの食堂の主人を演じる殿山泰司や、その娘役の清水まゆみなどの明るさに支えられてか、全体の印象はけっこう明るかった。
 ストーリーは、鉄火場のシーンが全体の流れの中で取って付けたような印象があったのと、後半で唐突に川崎球場での現金強奪というエピソードに向かってしまうなど、イマイチ場当り的で統一感に欠ける印象がある。
 キャスティングも、名前だけは文句のない人が並んでいるのだが、本来キーパーソンとなるべき北原三枝や宍戸錠が平凡で影が薄く、本来の魅力を発揮できる役柄ではなかったのが惜しまれる。
 ということで、この映画でもっとも注目なのは、この前年にデビューしたばかりの赤木圭一郎だろう。赤木は、芦田伸介に使われるチンピラ役を存在感たっぷりに好演しており、当時日活が彼を次期スターとして売り出そうとしていた様子がよくわかる。
 事実、この『鉄火場の風』が公開された1ヵ月後には、赤木の代表作となる『拳銃無頼帖 抜き射ちの竜』(1960)が公開されているのだ。

(1999/10/10)


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