『鉄火場の風』 (1960年 日活作品) |
|
前にも書いたように、裕次郎主演のヤクザ映画はマジメで深刻な作品が多く、遊びが少なくて息苦しい場合が多いんだけど、この映画に関しては、カタギの食堂の主人を演じる殿山泰司や、その娘役の清水まゆみなどの明るさに支えられてか、全体の印象はけっこう明るかった。
ストーリーは、鉄火場のシーンが全体の流れの中で取って付けたような印象があったのと、後半で唐突に川崎球場での現金強奪というエピソードに向かってしまうなど、イマイチ場当り的で統一感に欠ける印象がある。
キャスティングも、名前だけは文句のない人が並んでいるのだが、本来キーパーソンとなるべき北原三枝や宍戸錠が平凡で影が薄く、本来の魅力を発揮できる役柄ではなかったのが惜しまれる。
ということで、この映画でもっとも注目なのは、この前年にデビューしたばかりの赤木圭一郎だろう。赤木は、芦田伸介に使われるチンピラ役を存在感たっぷりに好演しており、当時日活が彼を次期スターとして売り出そうとしていた様子がよくわかる。
事実、この『鉄火場の風』が公開された1ヵ月後には、赤木の代表作となる『拳銃無頼帖 抜き射ちの竜』(1960)が公開されているのだ。