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柴又名画座
No.138
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『痴人の愛』
(1967年 大映東京)
監督/増村保造
原作/谷崎潤一郎
脚本/池田一朗
撮影/小林節男
美術/間野重雄
音楽/山本直純
出演/安田道代、小沢昭一、田村正和、倉石 巧、村瀬幸子、紺野ユカ、清川玉枝
カラー シネマスコープサイズ 92分
谷崎潤一郎の同名の小説の3度目の映画化。ひとりの男が、美少女ナオミを養女にもらい受け、自分好みの女性に磨き上げようとするが、ナオミは、成長するにつれ、次第に魔性の女となっていき、男はいつの間にか、ナオミの奴隷と化してしまう。
原作小説では、このナオミの無垢でいながら信じられないほどの大胆な行動をする悪女ぶりが見事に描かれている。そしてこの映画でも、女性映画を多く手がけた増村保造監督らしく、ツボを心得た演出で、安田道代を立派な悪女に仕立てあげている。
ただ安田道代は資質的に、少し頭で考えて演技しているところが見えてしまっているのが惜しい。本当の悪女というのは本能でなければならないのだ。って、これ、先日、柴又名画座で上映した
『ロリータ』
のときにも書きましたね。
増村監督の演出で素晴らしかったのは、ナオミが、そのときはもうすでに男と結婚しているにもかかわらず、英会話教室のパーティで知り合った大学生を自宅に誘いこみ、男3人とナオミでひとつのベッドに雑魚寝するシーンである。ここは一挙一動がナオミの悪女ぶりを見せる絶妙な演出といえるだろう。特にナオミの足の動きに注目していただきたい。この足癖の悪さが、まさに悪女なのである!!
そういえば、ぼくが原作を書いたまんが
『プレイヤーは眠れない』
にも、モナという奔放な女が出てくるが、そのモナを「足癖の悪い女」として描いたのは作画の正木秀尚氏であった。彼女が、長髪の主人公の後ろ髪を足の指で三つ編みにしてしまうシーンは、モナの奔放さを見事に表現した名シーンである。
それから、この映画では、ナオミにたぶらかされる若い大学生のひとりとして、田村正和が今では信じられないようなトッポい青年の役を演じていて面白かった。
(2000/06/24)
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