ファーブル森の夏

構成/黒沢哲哉、作画/フジアカまさひと

 1997年7月、ぼくはエニックスの「少年ガンガン」に昆虫まんが『ニーハオ!昆虫名探偵』の原作を書いたが、実はこの企画は当初、昆虫学者のファーブルがなぜか現代の日本へ現われて、日本の少年と一緒に昆虫に関する謎を解くという物語になる予定だった。
 しかし、物語にファーブルを登場させると対象読者層が低年齢になってしまう、また読み切りでファーブルを登場させる設定を入れると、ミステリーの謎解き部分にあまりページが割けなくなってしまうなどの事情から、当時の「ガンガン」の編集担当K村氏との幾度かの打ち合せを経た結果、この昆虫名探偵もの、という作品が完成した。

 だがぼくとしては、ファーブル先生の登場する話に対する思い入れも強く、いつかリベンジを果たしたいと思っており、それをたまたま「小学三年生」編集部の塚原氏にお話ししたところ、興味をもってくれて、今回のこの作品となったのである。
 ということで今回の作品の内容は、昆虫好きの少年が夏休みに、父の田舎の森へオオクワガタの群れをひと目見ようとやってくる。そこで妙ちくりんな昆虫マニアの老人と出会う…という物語。
 塚原氏との打ち合せの段階では、もっとファンタジーになる予定で、ぼくの原作も、少年の日のひと夏の思い出的な印象深い物語になるはずだった。そしてフジアカ氏との打ち合せでもフジアカ氏からファンタジー的な作品にしたいような意向をうかがっており、大いに期待していた。
 ところが残念なことに、決定したページが18ページと少なかったため、フジアカ氏の判断でキャラクターものとしてファーブル老人の性格を突出させたため、ファンタジーの要素が影をひそめてしまったことは実に残念だった。フジアカ氏なりに背景を描き込んだりと雰囲気を出す努力はしてくださったことが見てとれるだけに、ページの足りなさが惜しい。
 ぼくがこのまんがの原作を書く上で守った3つの原則 1.「昆虫の部分に関しては嘘をつかない」 2.「昆虫の生態に関する謎解きと驚きを必ず含む」 3.「少年が最後に老人の正体を知ったとき、少年はより昆虫が好きになっている」のうち、1と2に関しては、完成したまんがにまったく反映されていなかったのは無念としか言いようがない。
 よーし、ファーブルもののまんがに関しては、いつかまたどこかでリベンジしてやるぞ!!(黒沢


「小学館スペシャル ピカQクイズコミックランド1999夏休み号」(小学館) 1999/10/01号掲載(1C×18P)


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