『エノケンの孫悟空』前・後編 (1940年 東宝作品)

製作/滝村和男
監督/山本嘉次郎
原作/山形雄策
撮影/三村明
作曲・編曲/鈴木静一
特殊技術撮影円谷英二、奥野四郎
花井蘭子、北村武夫、柳田貞一、榎本健一、岸井明、金井俊夫、高勢実乗、土方健二
白黒 前編73分 後編67分
 太平洋戦争の始まる直前の昭和15年11月に公開された作品で、日劇ダンシングチームが、時局柄、東寳舞踊隊などという名前に改名させられて出演している。
 しかしそんな世相の暗さなど全く感じさせない明るさとスピード感とモダンさをもったミュージカルコメディの傑作だ。
 エノケンの悟空は、けっこうずるくてわがままだけど、そのくせお人好し、というキャラクターがうまく出ている。
 ロングショットを多用しているため、エノケンの表情の芸はあまり見られないが、そのぶん大きなセットステージを使ったアクションとモブシーンには目が離せない。
 悟空が如意棒を振って「イー、リャン、サン」と呪文を唱えると、パッと飛行機が出てきたり、マシンガンが出てきたりして、考証はメチャクチャ。何でもアリである。
 おまけにほうれん草の缶詰を食べると例のポパイのテーマが鳴り響いて力が湧いてきたり、三蔵法師一行が「星に願いを」の歌にのって案内されたのは、モロにディズニーの『白雪姫』や『眠れる森の美女』をイメージした妖精の国だったりとパロディ感覚もナイス。オススメ!!

 因みにスクリーンに出てくる本編のタイトルは『エノケンの孫悟空』ではなくただ『孫悟空』となっているだけだった。これは推測だが、題名に“エノケンの”と付けられたのは戦後のリバイバル時からなのかもね。

(1999/08/23)


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