『偉大なるアンバーソン家の人々』 (1942年アメリカ作品)

原題/THE MAGNIFICENT AMBERSONS
製作総指揮/ジョージ・J・シェーファー
製作・監督・脚本/オーソン・ウェルズ
原作/ブース・ターキントン
撮影/スタンリー・コルテス
音楽/バーナード・ハーマン
主演/ジョセフ・コットン、ドロレス・コステロ、ティム・ホルト、アン・バクスター、オーソン・ウェルズ
白黒 88分 ※オリジナルは131分
『市民ケーン』(1941)で鮮烈なデビューを果たした天才オーソン・ウェルズの監督第2作。
 19世紀末、名家アンバーソン家に生まれたジョージはその自由奔放ぶりから“小さな暴君”と呼ばれた。しかし、20世紀になると馬車が自動車に取って代わられたように、貴族の時代も終焉を迎えていった。
 リズミカルな編集と大胆な構図が、隙のない流れるようなテンポを生み出している。これはウェルズの演出が明快なコンセプトに従って進められたものであることを示しており、早くも2作目にして完成されたスタイルがあることに驚かされる。
 正直いって『市民ケーン』ほどの大胆な映像実験が行われているわけではないので、映画的な興奮というものは少ないが、そのぶん人物描写に力点が置かれていて、それぞれの人物の個性が際立っており、見栄、虚栄、真実、嘘、いたわりといった様々な感情が交錯する様はまさに貴族の描き出すアラベスク模様とでも言えようか。
 時代の変遷と時間の経過を、ファッションの変遷と自動車の進化によって見せるあたりもわかりやすく興味深い。
 因みに、資料によれば、オリジナルは131分だが一般に普及しているのは88分の短縮版だとのことで、今回柴又名画座で上映したのも、WOWOWで放映された88分の短縮版であった。
 実際、一族の栄枯盛衰を描いた大河ドラマとしては確かに駆け足の印象がある。全長版を見たらまた別の感想があるに違いない。

(1999/07/02)


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