『次郎長三国志・第六部 旅がらす次郎長一家』 (1953年東宝作品)

原作/村上元三
監督/マキノ雅弘
脚本/松浦健郎
主演/小堀明男、越路吹雪、若山セツ子、森繁久弥、久慈あさみ、廣沢虎造
白黒 104分
 東宝の「次郎長三国志」シリーズ第6作。前作で甲州の猿屋の勘助(小堀誠=小堀明男の実父)を斬って凶状旅に出た次郎長一家が、旅先でさまざまな人の恩と仇を味わう。
 プログラムピクチャーとしては長尺で12巻104分もあり、シリーズのひとつのクライマックスを成している。
 終わりなき逃亡の長旅に、次郎長一家の者たちが、徐々に疲弊していく描写がこまやかで痛々しい。特に次郎長の女房のお蝶(若山)が病いに冒され、次第に弱っていく過程が段階を踏んで丁寧に描かれている。行く先々でかくまってくれる人々が、誰が味方で誰が敵か分からないサスペンスも見どころだ。
 それにしてもマキノ監督はキャラクターを立てるのが実にうまい。今回初登場の越路吹雪も、彼女が登場して最初の数分間のモノローグだけで、彼女の人格を見事に表現しきっている。まんがは映画よりもさらに「ストーリーよりキャラクターが重要」な表現メディアだ。ぼくなどは特に参考にしなければ。

(1999/06/15)


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