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柴又名画座
No.233
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『野獣都市』
(1970年 東宝作品)
監督/福田純
製作/福田純、馬場和夫
原作/大藪春彦
脚本/石松愛弘
撮影/逢沢譲
音楽/佐藤勝
美術/育野重一
出演/黒沢年男、三國連太郎、高橋紀子、岡田可愛、清水将夫、伊藤孝雄
カラー シネマスコープサイズ 88分
大藪春彦原作のピカレスク・アクションである。
時は学生運動華やかな時代、大学はバリケードで閉鎖されていた。銃砲店でアルバイトをする大学生・有馬(黒沢)は、店の客で製薬会社社長の石浜(三國)に気に入られ、運転手として雇われる。
石浜は戦時中に麻薬の密造で成功し、今の地位を築いていた。しかし当時の秘密を知る男・岩野(小松方正)にゆすられる。有馬は持ち前の銃の腕を生かし、石浜のために岩野とやくざたちを殺す!!
貧しさの中に育ち、社会への怒りを心に秘めた青年が、権力者や悪を利用してのしあがる。大藪春彦の小説にはそうした主人公が多いが、この作品の主人公・有馬の場合は少し違っている。有馬は決して石浜を裏切ることはなく、石浜のボディーガードとして、危険を顧みずにひたすら身を呈して働くのだ。作品の後半、有馬が、石浜の会社をつぶして莫大な利益を得ようとした陰の悪党に対して「この野獣め!」と怒りをあらわにする場面があるが、石浜もまた元は悪事によって今の地位を得ているわけで、良く考えると、有馬の目的がいったいどこにあるのか、最後まで見えないところがこの作品の弱点だろう。原作は読んでると思うんだけど、遥か昔のことで全く記憶にないので、今回の映画のストーリーからのみ判断するだけだが、この中途半端さを見ると、実は有馬の物語にはまだ先があったのではないかとさえ思えてくる。
福田純の演出はシャープで、緊張感を保った隙のない構図とクロースアップの効果的な使い方によって、ハードボイルドな雰囲気をうまく作り出している。だからここに主人公有馬の情念のようなものがのれば、もっと傑作になったのになぁ、と思うと実に惜しいですね。
石浜の娘・美津子を演じた高橋紀子は、気が強くてわがままな社長令嬢役を好演していてとても魅力的だった。そこで他にどんな作品に出ているのかと検索してみたんだけど、1960年代半ばから70年ごろまでのごく短い期間に東宝で活躍していたことが分かっただけだった。その後引退しちゃったのだろうか。だとしたらちょっと惜しいなぁ。
それから岩野の娘役として、TBSのテレビドラマ「サインはV」(1969/10〜70/08)でまさにブレイク中だった岡田可愛が顔を出すのもうれしくなってきます。清純で純朴そうな娘の役なのに、なぜかゴーゴークラブ(作中ではスナックと言ってたけど、どう見てもスナックじゃありません・笑)でレジのアルバイトをしてたりしてちぐはぐなキャラなんですけどね。まあそれも当時の映画らしいご愛嬌ということで。
(2004/08/09)
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