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柴又名画座
No.227
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『兵隊やくざ』
(1965年 大映作品)
監督/増村保造
製作/永田雅一
原作/有馬頼義
脚色/菊島隆三
撮影/小林節雄
音楽/山本直純
美術/下河原友雄
出演/勝新太郎、田村高廣、滝瑛子、淡路恵子、成田三樹夫
モノクロ シネマスコープサイズ 102分
有馬頼義の「貴三郎一代」を原作にして、勝新太郎と田村高廣のコンビで9作まで作られたシリーズの第1作。このシリーズは小中学生のころにテレビでよく見ていた記憶があるんだけど、残念ながら第1作を見たかどうかははっきり覚えていない。
昭和18年、東京でやくざの用心棒をやっていた大宮貴三郎(勝)が、新兵として満州のある部隊に配属されてきた。そこに待っていたのは、上官たちの理不尽なシゴキだった。
しかし貴三郎が素直にシゴかれているはずもなく、たちまち問題を起こし、インテリ上等兵有田が、この貴三郎の指導係を命じられる。ここに、インテリ上官と暴れん坊新兵の名コンビが誕生した。
太平洋戦争真っ只中の軍隊を舞台にした物語であるにもかかわらず、この映画には、戦闘シーンは一切登場してこない。ここで描かれるのは上官や部隊同士の反目、そしてそこから生まれる無意味で理不尽な暴力ばかりである。映画的に誇張されているとはいえ、戦時中の理性を失った軍隊がどれほどひどいところであったかを生々しく描き出している。軍隊ってこんなひどいところだったんだと改めて恐ろしさを感じる。
この異常な暴力の世界で、階級の低い者、力の弱いものはただひたすら頭を低くして暴力の嵐が過ぎ去るのを待つしかない。逃げ場のない暴力は戦場より怖いかも知れない。
だが、そんな中で貴三郎と有田だけは違う。貴三郎は腕力で、有田は知力で、たとえ相手が上官だろうと数が多かろうと、敢然と戦いを挑み、自分もボロボロになりながらも徹底的に打ちのめし、そして勝つ! このカタルシス、たまりません(笑)。
現実世界では、暴力を暴力で制することで問題が解決することなど稀だけど、そこを強引に解決に結び付けてしまう痛快さがこの映画の身上なのだ。いつもは暴力反対なぼくだけど、この映画はこれでいいのだ。
この「兵隊やくざ」シリーズも、同じ時期に作られていた同じ勝新主演の
「座頭市」シリーズ
や
「悪名」シリーズ
と同様に、良くも悪くも勝新ワンマンショーになっていることは確かだ。だがそれでも、座頭市とも八尾の朝吉親分とも違った大宮貴三郎というキャラクターを体全体で演じてのけた勝新の演技力は見事だ。
(2004/07/12)
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