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柴又名画座
No.193
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『エクスカリバー』
(1981年 イギリス作品)
原題/EXCALIBUR
監督・製作/ジョン・ブアマン
原作/トーマス・マロリー
製作総指揮/エドガー・F・グロス、ロバート・A・エイゼンシュタイン
脚本/ロスポ・パレンバーグ、ジョン・ブアマン
撮影/アレックス・トムソン
音楽/トレヴァー・ジョーンズ
出演/ナイジェル・テリー、ヘレン・ミレン、ニコラス・クレイ、ニコル・ウィリアムソン
カラー ビスタビジョンサイズ 141分
伝説のアーサー王と円卓の騎士の物語を、『未来惑星ザルドス』(1974年)のジョン・ブアマンが監督した剣と魔法の物語だ。
ただ、その剣と魔法の物語をいたずらにビジュアルに凝ったファンタジーとはせずに、リアルな甲冑同士の肉弾戦や、アーサー王に仕える騎士ランスロットと、王の妻グエネヴィアとの不義など、大人の人間ドラマを中心に描いていくバランス感覚が見事だ。
アーサー王が、誰も引き抜けなかった聖剣エクスカリバーを抜くシーンの歯切れの良さも見ていて実に気持ちがいい。最初、アーサーがそれとは意識せずにエクスカリバーをアッサリと引き抜いてしまい、またそれをあわてて岩に刺し戻したりする演出が妙におかしく、それでいて緊張感を弛めない。そしてそれに続く、反逆していた騎士をアーサーが自分に仕えさせるシーンの緊張と弛緩もまた絶妙。これぞ映画という気持ちにさせてくれる名シーンではありました。
そして、そうしたリアルな前半部分から、今度は中盤から後半にかけて、加速度的に幻想的な雰囲気が増していき、ドラゴンの息=霧に包まれた戦場は、まるで黒沢明の『蜘蛛巣城』(1957年)を思わせる。かと思いきや、聖杯を求める円卓の騎士のシーンは『2001年宇宙の旅』(1968年)を連想させる抽象的な世界として描かれる。そんな不思議な雰囲気をかもし出す映像によって、最後にはしっかりとファンタジーを見せてもらった気持ちにさせてくれるのだからさすがである。
ところで、個人的にとても気になったのが、アーサー王と実の姉との間に生まれた息子が着ている黄金の甲冑(右の画像)である。これが、江戸川乱歩の黄金仮面か、はたまた日本で大正時代に作られた自動人形・学天則かといった風貌で、ミョーに気になる存在でありました。せっかく魔法使いの母親から「この甲冑は“人間の作ったもの”では決して壊せない」という魔法をかけてもらったのだから、もっと活躍して欲しかったです。
(2002/06/17)
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