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柴又名画座
No.192
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『誘拐報道』
(1982年 東映=日本テレビ作品)
製作/高岩淡、後藤達彦
企画/天尾完次、高井牧人
監督/伊藤俊也
脚本/松田寛夫
原作/読売新聞大阪本社社会部
撮影/姫田真佐久
音楽/菊池俊輔
美術/今村力
出演/萩原健一、小柳ルミ子、岡本富士夫、秋吉久美子、丹波哲郎、平幹二朗、高橋かおり
カラー ワイドサイズ 134分
※柴又名画座でテキストとしたのは、スタンダードサイズのトリミング版。
以前、ぼくが原作を書いている『HAIKARA事件帖』で誘拐の話(コミックス第4巻「許されざる言葉」)を書いたときに、作画の里見桂さんから「映画の『誘拐報道』が参考になるかも知れません」と言われて探したのだが、残念ながらそのときにはすでにビデオは絶版で、レンタルビデオ店にも中古ビデオショップにも在庫はなく、見ることができなかった。
それをつい最近、ヤフーオークションで見つけたので即購入し、ようやくこうして見ることができたのだ。
ストーリーは制服を着た名門らしい小学校に通う男の子と女の子ふたりの下校シーンから始まる。最初はそのどちらが誘拐される方なのか分からずドキドキしていたが、やがてその一方がいきなり誘拐され、事件は始まる。ガード下の歩道から走り出てきた子どもの頭上に、いきなり黒い布がかぶさり、そのまま子どもが消えてしまうというシーンは印象的だ。
その後、映画は事件を被害者と警察、加害者、報道規制の中で取材を続ける新聞記者たちという3元同時中継の形で進行して行く。この構成は、前半3分の1くらいまでは混乱があり、多少分かりづらかったものの、すぐに描き分けができて、ピリピリと張り詰めた緊迫感へとつながっていく。
それぞれのポジションに魅力的な役者が配置され、それだけでも充分に見応えがあるが、特に誘拐された子どもの母親を演じた秋吉久美子の迫真の演技は特筆ものである。犯人からの連絡を受け、金を持って指示された場所へ届けるが犯人は現れない。そんなことを繰り返すうちに徐々にやつれていく様は鬼気せまるものがあった。
たしかに里見さんがおっしゃっていたように、『HAIKARA事件帖』の原作を書く前にこの映画を見ていたら、きっとこの秋吉久美子の演技の影響を受けて、被害者の取り乱し方をもっと激しいものにしていたに違いない。
(2002/04/29)
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