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『一寸法師』 (1955年 新東宝作品)

企画/金田良平
監督/内川清一郎
脚本/館岡謙之助
原作/江戸川乱歩
撮影/岩佐一泉
音楽/大森盛太郎
美術/鳥居塚誠一
出演/安西郷子、宇津井健、三浦光子、二本柳寛、和久井勉
モノクロ スタンダードサイズ 84分
 江戸川乱歩が大正14年に東京朝日新聞に連載した同題の小説の、3度目の映画化。
 開巻、いきなり夜の繁華街を疾走する救急車のシーンで始まるが、それはただの酔っぱらいのケンカで怪我人が出ただけで、本物の事件はその直後に起こる。ケンカの現場に居合わせた作家の小林青年(宇津井)が、そこで怪しい一寸法師を目撃し追跡してみると、その一寸法師は、何と人間の足首を持っていた!
 翌日、小林は知り合いの社長夫人・山野(安西)から、5日前に行方不明になった先妻の娘の捜索を依頼され、ここで私立探偵・旗龍作(二本柳)の登場となる。  まさに江戸川乱歩的なムード満点のオープニングから、作品は実にテンポよく展開する。
 前半は今書いたように猟奇映画なのだが、後半になるにつれて徐々に謎が深まっていき、真犯人は誰か!? というサスペンス推理映画になっていくサービス精神旺盛なストーリー構成も飽きさせない。
 また、今見ると、終戦直後の雰囲気を残す下町の裏路地(上野あたりか?)や、道路がほとんど舗装されていない閑静な山の手の住宅街など、背景となっている風景も興味深い。
 ただ主人公である旗龍作が、ほとんど机上での推理に徹しており、一寸法師との直接対決が見られなかったのは残念。小林青年も、いまひとつ中途半端で居場所がない感じだった。
 ところで、この内川清一郎という監督さん、実に手慣れた歯切れのいい演出をするなあ、と思いつつも、あいにく名前を知らなかったので調べてみたら、この『一寸法師』が6作目の監督作品で、助監督時代には市川崑、清水宏、小津安二郎、溝口健二といった名だたる監督たちに付いていたようである。なるほど納得ですね。
 そしてフィルモグラフィを見ると、ぼくも『ザ・テンプターズ 涙のあとに微笑を』(1969年 東京映画)という内川清一郎監督作品を、はるか昔に見ていたことがわかった。

 因みにデータとして書き留めておくと、『一寸法師』の最初の映画化は1927年の無声映画で、製作/聯合映画芸術家協会、監督/志波西果・直木三十五、主演/石井漠、白河殊子。2度目の映画化は1948年、製作/松竹京都、監督/市川哲夫、主演/藤田進、市川春代 でありました。

(2001/11/07)


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