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柴又名画座
No.171
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『七人の侍』
(1954年 東宝)
製作/本木荘二郎
監督/
黒澤明
脚本/黒澤明、橋本忍、小国英雄
撮影/中井朝一
美術/松山崇
音楽/早坂文雄
出演/三船敏郎、志村喬、津島恵子、島崎雪子、藤原釜足、加東大介、木村功、千秋実、宮口精二、小杉義男、左卜全、稲葉義男、土屋嘉男、東野英治郎、上田吉二郎、多々良純
モノクロ スタンダードサイズ 207分
ぼくが映画を集中して見始めた高校・大学のころ、この映画は幻の名作の1本だった。当時、この作品は何年も劇場公開されておらず、また黒澤明は、映画をテレビで放映することを頑に拒んでいたため、テレビ放映もされていなかったのだ。
だからぼくは、佐藤忠男の黒澤本やキネ旬の世界の映画作家シリーズの解説などを読んでは、あれこれと想像をめぐらすしかなかった。
それが大学4年の時、ニュープリント完全版としてリバイバル公開されたのだ。
この黒澤の最高傑作と言われる作品を、初めて見たぼくは、個々の人物描写の巧みさやストーリーテリングの妙、そしてとりわけダイナミックなカメラワークに魅了された。
それまで名画座を回ってはコツコツと見てきた黒澤映画の傑作や佳作や駄作の全てのエッセンスがここに凝縮されていることを知った。まさに最高傑作の名はダテではなかったのだ。
今回、数年ぶりに再見してみても、その印象は少しも変わっていなかった。いや、個々のシーンの映像については、まるで昨日見た映画のように鮮明に記憶していたのだから、そもそも数年ぶりに再見したという感じすらしないのだ。
ただ学生時代は、もっぱらカメラワークや構図などテクニック的な部分に気持ちが向いていたので、今回は自分のマンガ原作の仕事にも生かすべく、セリフや個々の登場人物たちの感情表現を中心に勉強するつもりで見た。
特に前半、七人の侍がひとり、またひとりと集まっていくシーンの各キャラクターの描き方は、そのままマンガにも置き換えられるような人物表現のお手本のような描写となっている。いわゆるマンガ業界の用語で言うところの“キャラが立っている”のだ。
ただ中盤に挿入される志乃(津島)と勝四郎(木村)のラブロマンスが、全体の男臭いストーリーからは浮いた印象があって不要な気もした。
ところが後半、そのラブロマンスが、その後の勝四郎の感情の起伏や、農民たちの感情の起伏に反映していくあたりに生きてくることになると、もう何も言えなくなってしまう。やっぱり黒澤映画に無駄なシーンなど何ひとつないということをあらためて実感した。
さっそく、七人の侍たちがこの作品の中でどのように描かれていたかについて、あらためて分析をし、今後のぼくのマンガ原作に役立てようと思っている。
(2001/08/23)
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