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『レオン 完全版』 (1996年 フランス・アメリカ合作作品)

原題/LEON
監督・脚本/リュック・ベッソン
製作/クロード・ベッソン
撮影/ティエリー・アルボガスト
音楽/エリック・セラ
出演/ジャン・レノ、ナタリー・ポートマン、ダニー・アイエロ、ゲイリー・オールドマン、ピーター・アベル、マイケル・バダルコ
カラー シネマスコープサイズ 133分
 リュック・ベッソンが初めてアメリカで監督し、1994年に公開した『レオン』に、22分の未公開シーンを加えた完全版。といっても、ぼくは1994年版を見ていないのでそちらとの比較はできません。
 イタリアからアメリカへ渡ってきた孤独な殺し屋レオン(レノ)。誰とも交流を持たずに生きてきたそのレオンの元へ、ある日突然、麻薬捜査官に家族を皆殺しにされ、ただひとり生き残った12歳の少女マチルダ(ポートマン)が転がり込んでくる。
 少女は、麻薬捜査官に復讐をするため、レオンに「自分も殺し屋になりたい」と志願する。最初はそれを拒んでいたレオンだったが、彼女の強い思いに押されて、自分の仕事を手伝わせるようになる。それと同時に、ふたりの間には純愛の気持ちが芽生え始める……。
 冒頭から、マチルダがレオンのところへ逃げ込んでくるシーンあたりまでは『グロリア』と似た展開になるのかと思っていたが、そこから先は全く異なる不思議なラブストーリーが展開していく。
 生々しい殺戮シーンが続くわりに、全体的にグロテスクな印象が薄いのは、恐らく意図的にリアリティを削ぎ落しているからだろう。大人のファンタジーとして描きたかった意図はとりあえず伝わってくる。
 ただ残念なのは、マチルダに対するレオンの気持ちの変化がいまひとつ読み取れないところ。特に前半は、彼がどういう気持ちで彼女と接しているのかがほとんど見えてこない。12歳の少女とのラブストーリーということで、もしかしたらジャン・レノ自身も理解しがたいところがあったんじゃないだろうか。牛乳が大好きな殺し屋というのも演出意図がよくわからない。
 それから、オールドマン演じるヤク中の麻薬捜査官も、エキセントリック過ぎて、かえって存在感が希薄になってしまっている。もう少し抑えたキャラクターでも十分だったのではないだろうか。
 ……などといろいろ感想は出てくるのだが、そもそもこの作品全体に感じる違和感は何だろう。それは「殺し屋と少女の純愛」という根本的なシチュエーションの展開の方法論を間違っているところにあるのではないか。まず発想は良しとしよう。けれどもどんな理由があれ、少女に人殺しの仕方を教えたり、一緒に殺しを手伝わせちゃだめでしょう。この殺し屋は「女と子ども以外は殺す」というポリシーを持っているらしく、そうした表現で「いちおう人間性はまだ持っているんだな」という部分を見せているのかも知れないが、そんなこと言われてもなぁ。このあたりは微妙な部分であるだけに、もう少し心情的に納得できる繊細な表現をして欲しかったですね。
 いずれにしても、この映画に魅力的な部分があるとすれば、それはナタリー・ポートマンの堂々とした演技に尽きる。彼女の出演シーンに漲る吸引力はすごいものがある。随所に違和感を感じつつ最後まで見せられてしまうのは一に彼女の魅力のおかげだ。ただ、この映画はシチュエーション的にあまりにも悲しすぎる作品だったので、彼女にはこの年齢の頃に、もっと幸福な役を演じて、笑顔をいっぱい見せてもらいたかったですね。

(2001/04/12)


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