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柴又名画座
No.132
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『うなぎとり』
(1957年 松竹=歌舞伎座映画作品)
監督/木村荘十二
脚本/新藤兼人、勝目貴久
出演/望月優子、真藤孝行
モノクロ スタンダードサイズ 49分
夏、ひとりの戦争未亡人の女性が、息子の少年を連れて、農繁期の農村へ野良仕事の手伝いにやってくる。
少年は、地元の子どもたちが
簗
(
やな
)
を使ってうなぎとりをしているのを見て興味を示す。最初はお互いによそよそしかった子どもたちだが、次第に打ち解け、新参者の少年も、母親に作ってもらった簗でうなぎとりに加わった。そして子どもたちの友情は次第に深まっていくのだった。
映画は、意外な展開も、驚くような事件もまったくなく、ほのぼのと、そして淡々と、少年と少年の母親の田舎暮らしの日常が描かれていく。
言ってしまえば、まったく平板なドラマなんだけど、そこに実に不思議なほどのやさしさと暖かさが描かれているのである。日本人ならではの思いやりとか、子どもたちの純粋さとかが信じられる、そしてそれが裏切られることがないという、ある意味で、希有な映画だといえるだろう。
かつて日本映画にこんな映画が存在したということを知っただけでも大きな収穫だった。たとえ物語にドラマ性がなくても、人間の心のドラマは描けるのである。
(2000/05/20)
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