Top 柴又名画座 No.117 Back
『第七天国』 (1927年 アメリカ作品)

原題/7th HEAVEN
製作総指揮/ウィリアム・フォックス
監督/フランク・ボーセイジ
原作/オースチン・ストロング
脚本/ベンジャミン・グレーザー
撮影/アーネスト・パーマー、J・A・バレンタイン
美術/ハリー・オリバー
出演/ジャネット・ゲイナー、チャールズ・ファレル、ベン・バード、デビット・バトラー、マリー・モスキーニ、アルバート・グラン、ジョージ・ストーン
白黒 サイレント スタンダードサイズ 119分
 第一次大戦前のフランスのパリ。貧しい下水掃除人のシーコウ(ファレル)は、たとえ貧乏でも心はいつも上向きでありたいと願い、おんぼろアパートの7階のペントハウスに住んでいる。
 ある日シーコウは、姉にいじめられている娘ディアヌ(ゲイナー)を助け、行きがかり上、彼女を妻と偽って、自分の家へ連れてくることになる。
 シーコウは、最初はディアヌに「このまま居つくなよ」などと言って邪険にしているが、根は決して悪人ではなく、同情は次第に愛情に変わっていった。
 しかしシャイなシーコウは、ディアヌにどうしても愛していると言えず、こんな言葉を口にする。
「シーコウ、ディアヌ、ここが天国」と。
 やがて結婚を約束するが、そんな矢先、ドイツとの戦争が始まり、シーコウも召集されて戦地へと向かうことになる。

 とにかく、全編にただようハートウォーミングな空気に息苦しくなってしまうほど。それも、強引に盛り上げて感動を作り出すのではなく、人々のやさしさがじんわりと伝わってくる、そんな映画なのだ。
 人の人生は楽しいことよりも辛いことの方がずっとずっと多いけれども、その人生の中に、ほんのささいな幸せと他人への思いやりさえあれば、その人の人生は幸福である。そんなテーマが最初から最後まで貫き通されている。
 淀川長治の選んだ名作映画100撰の中の1本で、ビデオの冒頭には、あの懐かしい淀長節で、この映画に対する思い入れが切々と語られている。その言葉と共に、ぼく自身にとっても、重要な一本になったことは間違いない。
 それにしても、世の中には、ぼくの知らない名画がまだまだあるとあらためて思う。映画は出会いだ。これからもこんな素晴らしい出会いがいくつあるんだろうと思うと、楽しみでしょうがない。だから映画はやめられない。

(2000/03/27)


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