『フェイス/オフ』
(1997年 アメリカ作品)
原題/FACE/OFF
監督/ジョン・ウー
出演/ジョン・トラヴォルタ、ニコラス・ケイジ、ジョン・アレン、ジーナ・ガーション、アレッサンドロ・ニヴォラ
カラー シネマスコープサイズ 140分
FBI捜査官アーチャーが、凶悪犯トロイをやっとのことで逮捕する。
そしてそのトロイの顔を、特殊医療技術によって剥ぎ取り、それを自分に移植してトロイになりすまして潜入捜査をすることになる。
ところが、昏睡状態だと思ったトロイは突然目覚め、アーチャーの顔を移植してアーチャーになりすましてしまった。
このあらすじは、劇場公開当時、テレビの映画紹介などでもさかんに紹介していたから、見てなくても知ってる人も多いと思う。
しかし、実際の作品を見てみると、ふたりの演じ分けなど、ただ「ふたりが入れ替わった」以上に見どころが多く楽しめた。
もちろんジョン・ウーお得意のアクションシーンは楽しめるが、見どころはふたりが入れ替わって互いに何をするかということだ。
次第にどちらが悪人でどちらが善人かもわからなくなるほど混乱してくる。事実、レイプされそうになったアーチャーの娘を、アーチャーになりすましたトロイが救ったり、警官に撃たれて瀕死のトロイの相棒に、トロイになりすましたアーチャーが同情したりといった、奇妙な感情の交錯がみられる。
それから、これは意図的な演出なのだろうが、入れ替わり前と入れ替わり後でキャラクターが微妙に違っているところが面白い。
これは、大林宣彦監督の『転校生』にも見られた演出で、入れ替わってしまった尾美としのりと小林聡美のキャラクターが、入れ替わる前と後ではガラリと違っていたのを思い出す。
ただ、この『フェイス/オフ』の欠点は、その設定の根本の部分にある。
顔を剥いで他人に移し替えるという部分に決定的にリアリティが欠けているのだ。他の部分がリアルで人間もよく描けているだけに、「体格がほぼ一緒だから、骨格も顔の形も血液型も違うが入れ替わりは可能だ。しかもあとで元通りにできる。傷口は最新の薬ですぐに治る」とか言われても、どうしても「嘘だろう」という気持ちが残ってしまうのだ。
だって…トラヴォルタの顔は、どういじってもニコラス・ケイジの顔にはならんでしょう(笑)。
ここは映画の設定を左右する重要な部分だっただけに、もうすこしハッタリをかまして信用させてもらいたかったですね。
ところで、資料によれば、タイトルの「FACE/OFF」にはダブルミーニング、つまり2つの意味があって、文字どおりの“顔を剥ぐ”という意味の他に“対決”という意味もあるそうですね。
(1999/11/26)
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