『いつでも夢を』 (1963年 日活作品)

企画/児井英男
監督/野村孝
脚本/下飯坂菊馬、田坂啓、吉田憲二
撮影/横山実
音楽/吉田正
美術/木村威夫
出演/橋幸夫、吉永小百合、浜田光夫、信欣三、織田政雄、初井言栄
カラー シネマスコープサイズ 86分
 1963年度レコード大賞受賞曲 「いつでも夢を」(作詞/佐伯孝夫、作曲/吉田 正、唄/橋幸夫、吉永小百合)をテーマ曲として映画化された日活青春映画だ。
 下町・荒川沿いの工場に勤めながら定時制高校に通う勝利(浜田)と、町医者の養女ひかる(吉永)、そしてトラックドライバー留次(橋)の3人が、貧しくとも明るく生きる姿を描く。
 実は、三無主義の70年代とシラケの80年代に青春時代を送ったぼくは、「みんなで励まし合ってがんばりましょう」的な60年代風青春映画は受け付けないものがあるのだが、この作品は、それぞれの人生や気持ちがきっちり描かれていてほんとうにさわやかな傑作になっていて素直に感動できた。
 最初はモロに「貧しくてもみんなで仲良くがんばってやりましょう」風に始まって「うわぁ〜ダメだぁ〜」と思ったのだが、次第にそれぞれの抱えている(それもかなり重い)問題が浮かび上がってくるあたりから、がぜんドラマに深みが出てくるのだ。
 両親と死別し孤児となったひかるは、孤独な画家の青年の元に身を寄せるが、その青年も結核で死に、ふたたび孤児に。そして医者の泰山にもらわれて初めて幸福をつかんだという背景を背負っている。
 勝利は、父親が相場に手を出して失敗、家族を捨てて逃げ、彼の肩に一家の生活と将来が重くのしかかっている。などなど…。
 橋幸夫の演技もなかなか。脇役として登場する野呂圭介や、珍しく泣き言をいう役で登場する松原智恵子もいい味出してます。
 それと、勝利の中学生の弟とその友達などが出てくるのだが、その子供たちのリアリティもすごい。昭和30年代の下町の子供って、確かにこうだったよな、という感じで懐かしくなりました。

(1999/11/15)


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