『ブルックリン横丁』
(1945年アメリカ作品)
原題/A TREE GROWS IN BROOKLYN
製作/ルイス・L・ライトン
監督/エリア・カザン
原作/ベティ・スミス
脚本/テス・シュレシンジャー、フランク・デイビス
主演/ペギー・アン・ガーナー、ジェームズ・ダン、ドロシー・マクガイア、ジョーン・ブロンデル
白黒 129分
20世紀初頭、ニューヨークの下町・ブルックリンに住む貧しいアイルランド移民一家。夢を追ってばかりいる飲んだくれの父、生活苦のためにいつしか笑顔を忘れてしまった母。それでも父を愛し尊敬している娘フランシー(アン・ガーナー)。物語はその娘の目を通してこの町に生きる人々の姿を活写する。
誰もが欠点だらけなのに、決して悪人ではない。すべての人が家族を信頼し、友を敬い、隣人を慕う。一歩あやまれば偽善的になりかねない設定をさらりと描いてハート・ウォーミングなドラマに仕立てている。
形が崩れてしまったために、クリスマスのチャリティに出せずに残った小さなパイ。父に買ってもらう約束だったローラースケート、売れ残りのクリスマスツリー、安アパートのペントハウスに住む老女が、引っ越しのときに置いていった古いアップライトピアノなど、家族の絆を確かめるために物語の随所に登場しては涙腺を刺激する小道具に、いちいち「やるなぁ」と思いながらもジーンとさせられた。
資料によれば、エリア・カザン監督のデビュー作だとのことで、後の『エデンの東』(1955)や『草原の輝き』(1961)など、人の生きざまを正面からとらえた骨太なドラマを生み出す演出力の一端がうかがえる。
また、娘役を演じるペギー・アン・ガーナーの、喜びを表現するときのパッと花が咲いたような笑顔はとても演技とは思えない自然なもので、それだけで見ているものを幸福にする力がある。
往年のハリウッド映画は、最も難しいと言われる子役と動物の演技が超一流なので、映画を支える人々の層が本当に厚かったことをつくづく思い知らされますね。
(1999/06/26)
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