『三人の名付親』 (1948年アメリカ作品)

原題/3 GODFATHERS
製作/メリアン・C・クーパー、ジョン・フォード
監督/ジョン・フォード
原作/ピーター・B・カイン
脚本/ローレンス・スターリングス、フランク・ニュージェント
主演/ジョン・ウェイン、ペドロ・アルメンダリス、ハリー・ケリー・ジュニア
カラー 107分
 銀行強盗をして逃亡する3人の男たちが、砂漠の真ん中で瀕死の母親の出産に立ち合う。母親は彼らに赤ん坊を託して死に、3人は追っ手が迫るのも忘れ、赤ん坊を抱いて町までの旅を始める。
 有名すぎる物語の概略は知っていたけれど、映画を見たのは初めて。WOWOW のプログラムガイドには「佳作」とか書いてあるけど、そんな控え目な表現じゃなくて、これはもう文句ない傑作です。あらすじだけだと「それだけか」と思うかもしれないけど、それを肉づける登場人物のキャラクターやディティールの表現に、並の「名画」など吹き飛んでしまうような厚みと説得力がある。主役も脇役も、そして会話の中にしか登場ない、赤ん坊を産んで死ぬ女性の「夫」さえもが、生きたキャラクターとして描かれている。まさにフォード監督の職人技である。
 3人が赤ん坊をめぐって意見が分かれたときに、偶然開いた聖書のページが、彼らに道を示してくれる部分では、思わず「すごい!」とつぶやいてしまった。黒澤明がインスパイアされ、自らの作品にも取り入れた「偶然をも味方にする」映画の魅力がここに集約されている。
 ラスト10分前まで、ハッピーエンドなのか、アンハッピーエンドなのか、まったく予想がつかずもう目が離せない。未見の方は、ビデオでも映画でも、ぜひご覧になることをお薦めいたします。感動するよ。

 資料によれば、この『三人の名付親』は、ジョン・フォードが監督した1919年の『恵の光』( 主演/ハリー・ケリー)のリメイクだそうである。『三人の名付親』はその名西部劇俳優ハリー・ケリーに捧げられており、3人組のひとりとして出演しているハリー・ケリー・ジュニアは、もちろん彼の息子だ。
 また別の資料によれば、この映画はウイリアム・ワイラー監督の『砂漠の生霊』(1930)のリメイクだとあるが、これは年代から言ってもフォード作品の方がオリジナルでしょう。機会があったらこの2本もぜひ見てみたいですね。

(1999/06/18)


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