『次郎長三国志 次郎長と石松』
(1953年東宝作品)
原作/村上元三
監督/マキノ雅弘
脚本/マキノ雅弘、松浦健郎
主演/小堀明男、森繁久弥、久慈あさみ、若山セツ子
白黒 87分
東宝の「次郎長三国志」シリーズ第3作。前作から登場した森繁久弥演じる森の石松。前作では顔見せ程度にとどまった彼が、今回はタイトル通り、いやそれ以上にひとり舞台の大活躍をする一編である。
何しろ石松と、旅先で知り合った遊び人の追分三五郎(小泉博)、そして流れ者の女イカサマ壷振り師 投げ節お仲(久慈・写真左)の3人がからむシーンだけで全体の半分以上を占めているんだから、これはもう森繁のために作られたシナリオといっていいでしょう。
マキノ監督は早撮りだったと言われるが、こうやって彼の作品を続けて見ると、カット割りにいくつかのパターンがあって、それをうまく組み合わせていることがわかる。だから役者も監督との付き合いが深くなればなるほどツーカーで演技ができるようになり、無駄のない、キレのある芝居ができるわけである。構図にしても、黒澤や小津のように一部の隙もない画面構成にするわけではなくて、フレーミングをある程度ルーズにしておき、その中で役者に自由に動いてもらうという大らかさが、画面に躍動感を与える結果になっている。
(1999/06/09)
※ブラウザの[戻る]または[Back]ボタンで戻ってください。