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『狙撃』 (1968年 東宝作品)

監督/堀川弘通
製作/貝山知弘
脚本/永原秀一
撮影/長谷川清
音楽/真鍋理一郎
美術/村木忍
出演/加山雄三、浅丘ルリ子、森雅之、岸田森、藤木孝、笹岡勝治、川合伸旺
カラー シネマスコープサイズ 87分
 加山雄三がクールな殺し屋を演じた東宝ハードボイルドの傑作だ。
 まともに再見したのは20数年ぶりだろうか。ディティールはほとんど覚えていなかったので、実に新鮮に見られた。
 元射撃部の松下(加山)は、金で雇われて狙撃をする殺し屋だ。ある日、金塊強奪の手助けを頼まれ、見事に役目を果たす。しかし相手側の雇った殺し屋・片倉(森)に仲間を殺され、恋人の章子(浅丘)まで誘拐されてしまう。松下は、親友深沢(岸田)が作った特製弾丸を込めた銃を手に、ひとり片倉の元へ向かった!
 1960年代から70年代にかけて、東宝は大藪春彦的なハードボイルド映画の傑作を多数製作している。しかし当時ぼくが好きだったのは、それと並行して作られていた明朗な痛快アクション映画の方だったため、この作品も、リアルタイムで見たかどうか記憶が定かでない。
 もし見ていたとしても、小学生だったぼくには、滅びの美学とか破滅型の人生なんて理解できなかったんでしょうね。若大将シリーズの大ファンとしては「いつもの若大将じゃない〜(涙)」という印象もあっただろうし(笑)。
 ということで、これらハードボイルド映画の数々をまともに見たのは大学に入って以降のことで、それからあらためてファンになった次第である。
 この映画は、永原秀一によるオリジナル脚本が素晴らしく、孤独で寡黙な殺し屋の生き様がフィクションとリアルのギリギリの境界線で見事に描かれている。
 夜と闇の世界に生きる殺し屋松下と、ジャマイカの太陽を夢見る恋人章子。このふたりの対比も、意味なく60年代してていい感じ。浅丘ルリ子はこうした孤独な男を引き立てる恋人役を演じさせたらナンバーワンですね。
 そして、登場シーンは少ないものの、強く印象に残るのが、加山の学生時代の射撃仲間で現在は米軍基地の町・立川でガンショップを経営する深沢(岸田)だ。この深沢と松下の生き方の対比が、松下の孤独をよりいっそう浮き彫りにしている。
 それと、実は加山はガンマニアだそうで、この映画は、当時の映画には珍しく銃器の表現がリアルなのもうれしい。
 敵の殺し屋片倉が愛用する無骨な軍用銃モーゼルが、スローのシーンでブローバックして薬莢を排出しているのには驚いた。
 今では、自動拳銃を撃つシーンで銃から薬莢が排出されるなんて表現は当たり前になっている(むしろやらないと手抜きと言われかねない)が、当時の映画でこうした部分にこだわった作品はほとんどない。
 日活無国籍アクションの日活コルトもそれはそれでファンタジーとして好きなんだけれども、ハードボイルドで銃や車にこだわったリアリティは重要でしょう。
 ということで、松下の愛車がトヨタ2000GTというのも素晴らしい。当時の車では、松下の乗る車はこれ以外に考えられないだろう。
 ここでトヨタ2000GTについて、映画『007は二度死ぬ』にもボンドカーとして登場していたとか、ほとんど手作りで生産され、わずか337台しか作られなかったとか、簡単にウンチクを語ろうと思ったら、ウィキペディアにうまくまとめて紹介されていたので、そこへリンクして手抜きしちゃいます(笑)。

<< ウィキペディア「トヨタ・2000GT」の項 >>
(2005/07/29)


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