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柴又名画座
No.163
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『ラスト・ショー』
(1971年 アメリカ作品)
原題/THE LAST PICTURE SHOW
製作/バート・シュナイダー、スティーブン・J・フリードマン
監督/ピーター・ボグダノヴィッチ
脚本/ピーター・ボグダノヴィッチ、ラリー・マクマートリー
原作/ラリー・マクマートリー
撮影/ロバート・サーティース
出演/ティモシー・ボトムズ、ジェフ・ブリッジス、シビル・シェパード、ベン・ジョンソン、クロリス・リーチマン、ランディ・クエイド、エレン・バースティン
モノクロ ビスタビジョンサイズ 126分
1950年代のテキサスの片田舎の町アナリーンを舞台に、若者たちの愛と孤独と悲しみの青春を、さびれていく町の風景の中で描いたアメリカン・ニュー・シネマの傑作。
映画史的な話をすると、この作品の登場後、1970年代半ばから1980年代にかけて、'50年代や'60年代を舞台にしたノスタルジックな青春映画が多く登場し始める。
その代表は『アメリカン・グラフィティ』(1973)だが、そうした後の'50〜'60年代を舞台にした青春映画では、そのノスタルジーあふれる時代背景を、若者の熱気あふれる青春を描く舞台装置として使っている。
それに対してこの作品では、失われゆく古き佳きアメリカン・スピリットへの鎮魂歌が描かれている点が大きく異なっている。
この映画に、その象徴として登場するのが、閉館する映画館と、フロンティア精神を淡々とした口調で語る初老の男、サム・ザ・ライオン(ベン)なのである。
ぼくがこの映画を初めて見たのは大学時代のことだが、当時、その抑制された静かな表現の中に込められた若者の孤独感に、強い共感を覚えたのを覚えている。
この映画の中に登場する若者たちの抱える様々な悩みや問題は何一つ解決することなく、彼らが完全燃焼することもない。そんなくすぶり通しの彼らの青春に、等身大の自分の姿が見えた気がしたからだ。
ここに描かれているのは失われゆくアメリカン・スピリットである。しかしその空気はまるでフランスの青春映画のそれであり、青春のやるせなさが誠実な視点で描かれている点で、ぼくの貴重な映画の一本なのである。その気分は、20年ぶりに再見した今回もいささかも変わることはなかった。
(2001/05/08)
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