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柴又名画座
No.162
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『タッカー』
(1988年 アメリカ作品)
原題/TUCKER:THE MAN AND HIS DREAM
製作総指揮/ジョージ・ルーカス
製作/フレッド・ルース、フレッド・ブックス
監督/フランシス・F・コッポラ
脚本/アーノルド・シェルマン、デビッド・セイドラー
撮影/ヴィットリオ・ストラーロ
音楽/ジョー・ジャクソン
出演/ジェフ・ブリッジス、ジョアン・アレン、マコ、マーチン・ランドー、クリスチャン・スレーター
カラー ビスタビジョンサイズ 111分
1940年代、アメリカの3大自動車メーカーを相手に、個人で理想とする車を作った伝説の男プレストン・タッカー(ジェフ)の半生をドラマチックに描いた作品だ。
この作品は、ぜひ見たいと思いつつ劇場公開時に見逃がしてしまったため、後にレンタルビデオで見ようと思ったら、何と当時発売(レンタル)されたビデオソフトは画面の両端がテレビサイズに切り取られたトリミング版のみというありさまで、あきらめてずっと見ないでいたものだ。それがつい最近、WOWOWでノーカット・ノートリミングで放送されたため、こうして柴又名画座で上映できることになったのである。
コッポラ監督始めルーカスファミリーは、こうしたノスタルジックな作品で名を挙げて行ったわけで、そうした意味ではこのタッカーの伝記など、まさにアメリカンドリームの象徴と言うべき、最も映画化したい伝説であったのだろう。それを映像化する監督の喜びとでもいうべきものが、画面の端々からひしひしと伝わってくる。
特にこの流線形の車の魅力を伝えるために繰り返し舐めるように撮影するカメラワークはカーマニアならずともフェティッシュでセクシーな印象を持つだろう。
ただ、主人公タッカーのキャラクターがかなりエキセントリックで、のっけからノンストップで走りまくるのにはいささかついていけない部分もあるのは事実だ。時にはまるで古澤憲吾監督+植木等主演の「無責任」シリーズを思わせるシュールさになったりして、これはギャグなのか真面目なのかと頭をひねるシーンもあった。
特に前半はその傾向が顕著なのだが、これはもしかしたら、前述したように、監督のこの映画を撮ることの喜びそのものが反映しているのかもしれない。
後半になるとそれも次第に落ち着いていき、裁判シーンなども織り混ぜて、理想と現実の狭間で揺れる主人公の姿が実に魅力的なものとなってくる。
しかしまたここで反語を重ねると、ようやくこのタッカーという人間の魅力が見え始めたところで映画が終わってしまうのは非常に惜しい。この先にもう一つドラマがあった気がするのだが、どうなのだろうか。
(2001/05/03)
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