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柴又名画座
No.161
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『吉原炎上』
(1987年 東映)
監督/五社英雄
原作/斎藤真一
脚本/中島貞夫
撮影/森田富士郎
音楽/佐藤勝
出演/名取裕子、二宮さよ子、藤真利子、西川峰子、かたせ梨乃、根津甚八
カラー ビスタビジョンサイズ 133分
明治末期。吉原へ売られてきたひとりの少女・久乃(名取)が一人前の花魁となるまでを描いたドラマである。
題名になっている“吉原炎上”というのは、明治44年4月9日に起きた吉原の大火のことで、この大火によって吉原は灰燼に帰し、古き佳き時代の吉原の面影は完全に消えたと言われている。
今回、柴又名画座でこの作品を見たのは、同じ明治末期を舞台とする、ぼくのマンガ原作作品『HAIKARA事件帖』の参考資料とするためだったのだが、ぼくが文献で調べた吉原の風俗や風景がかなり忠実に再現されており、実際にマンガのための資料的価値はかなり大きかった。
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そうした意味では全編を非常に興味深く見たのだが、単独の映画として見た感想を述べるとすれば、残念ながら、人間ドラマの部分がありきたりの人間模様の組み合わせになってしまっていて平板だったのが残念だった。
ぼくが調べた範囲でも、史実の花魁の生きざまというのはそれだけでかなり衝撃的で信じられないほどドラマチックなものであり、もしかしたら脚本化の段階で、その史実に引っぱられ過ぎてしまったのではないだろうか。
また、名取裕子演じる主人公の少女が、次第に吉原の風俗に染まり変化していく過程も、もう少し細かく具体的に描いて欲しかった。
映像的には、画面全体のトーンを安易に派手にせず、あえて醒めた渋い色調にしたところに好感が持てる。
(2001/05/02)
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