Top 柴又名画座 No.155 Back
『ドラえもん のび太と翼の勇者たち』 (2001年 東宝作品)

原作/藤子・F・不二雄
監督/芝山努
脚本/岸間信明
作画監督/富永貞義
原作作画/藤子プロ
美術設定/沼井信朗
美術監督/森元茂
音楽/堀井勝美
声の出演/大山のぶ代、小原乃梨子、野村道子、たてかべ和也、肝付兼太、知念里奈
カラー ビスタビジョンサイズ ?分
 ある日、出来杉くんから鳥人伝説の話を聞いたのび太は、鳥のように空を飛ぶことに憧れ、自分で翼を作って空を飛ぼうとする。と、その目の前に何と本物の鳥人の少年が現れた。彼は別世界から時空の穴を通ってやってきた鳥人間・グースケだった。
 のび太たちは、時空の穴へ吸い込まれてしまったジャイアンとスネ夫を追って、グースケと共に鳥人間の世界へ向かう。そしてやってきたのは、バードピアと呼ばれる鳥人間の国だった。
 だが、ハゲタカのジーグリード長官は、封印されていた魔物・フェニキアの力を目覚めさせてしまった。のび太たちは、バードピアを救うために、勇者・イカロスと共に立ち上がる!!
 今回も、大長編『ドラえもん』お約束の異世界物である。個々のシーンには見るべき点が多々あるのだが、いかんせんテーマその物に新味がないのが残念。
 また空を飛びたいという人間の本質的な憧れを形にした狙いはいいとしても、そこへ至るプロセスがかなり唐突で説得力に欠ける。なぜ異世界への穴がそこに開いたのか、またなぜのび太たちがそこ(異世界)へ行かなければならなかったのか、そのあたりをもう少していねいに描いてほしかった。
 また、冒頭でのび太が、空を飛びたいと言って自分で翼を作ったりして努力を重ねるシーンが描かれているが、その直後にドラえもんのひみつ道具バードキャップが登場して、あっさりとその夢が実現してしまうのもかなり白ける。ここはむしろ、途中でそのバードキャップが使えなくなってしまうようなシチュエーションを作り、空を飛ぶことの価値と意味をもっとふくらませることができたのではないだろうかと考えると実に惜しい。……って、ぼくが勝手に話をふくらませちゃってはいけませんね(笑)。
 とにかく大長編『ドラえもん』シリーズも、すでに同じパターンの繰り返しに陥っている感がある。それはマンネリというのとはちょっと違う。それぞれのシチュエーションを支える必然性を描く想像力が欠けているのである。そろそろこの展開について見直すべき時期に来ているのではないだろうか。

(2001/03/31)

Top 柴又名画座 No.156 Back
『がんばれ! ジャイアン!!』 (2001年 東宝作品)

原作/藤子・F・不二雄
監督/渡辺歩
脚本/藤本信行
作画監督/渡辺歩
美術監督/鈴木朗
音楽/菊池俊輔
声の出演/大山のぶ代、小原乃梨子、野村道子、たてかべ和也、青木和代、佐々木望
カラー ビスタビジョンサイズ ?分
 てんとう虫コミックス『ドラえもん』第40巻に収録されている「泣くなジャイ子よ」をベースとして、原作にはないエピソードを加えてふくらませ、感動物語に仕上げている。
 例によって、渡辺監督のきめこまかいていねいな演出で、叙情的な作品に仕上がっている。雪の中に散らばってしまった、ジャイ子のマンガ原稿を集めるという、原作にないシーンはうまくハマっていた。
 しかしジャイアンがいきなりいい兄貴として登場するあたりはいささか唐突で残念だった。ここが今回の作品のポイントでもあるだけに、内容をふくらませるにあたっては、もう少し描き込んで欲しかったところですね。

 今回は2作品とも、ソツなくまとまっていただけに、かえって残念な部分が目立ってしまい、評価が辛口になってしまいました。もちろん両作とも、水準以上の作品であったことは言うまでもありません。

 因みに、併映作『ドラミ&ドラえもんズ 宇宙ランド、危機イッパツ!』は、一緒に行った子どもたちが飽きてしまい、帰ると言い出したので、見られませんでした。うーむ……。

(2001/03/31)


[Top] | [Back]