Top 柴又名画座 No.146 Back
『自由学校』 (1951年 松竹大船)

製作/山本武
監督/渋谷実
脚本/斎藤良輔
原作/獅子文六
撮影/長岡博之
音楽/伊福部昭
美術/浜田辰雄
出演/佐分利信、高峰三枝子、淡島千景、佐田啓二、田村秋子、杉村春子、笠智衆、三津田健
モノクロ スタンダードサイズ 110分
 開巻、いきなり「自由…自由が欲しいよ…」とうわごとのように言う佐分利信のセリフから始まり、続いてそれを「フンッ」と鼻でせせら笑うその妻(高峰)、というオープニングに驚かされる。
 ぐうたらなために妻に追い出された夫が、御茶ノ水の神田川沿いで、ホームレスとなって生活を始める。
 戦前まで封建社会の中で威張ってきた夫が、戦後の民主主義の中で強くなった妻に束縛され、自由を求めるという皮肉な構図の中に、戦後の世相が皮肉たっぷりに描写されている。
 それぞれの人物がかなり誇張して描かれていて、実際に生身の人間と感じられるのは主人公の男だけという思いきりの良さが、作品の歯切れの良さにつながっている。
 資料によれば、この『自由学校』は、当時、松竹と大映の競作だったということで、大映では吉村公三郎監督、小野文春主演で映画化され、両者同じ週に封切りされたのだという。機会があればぜひ大映版も見てみたいですね。

(2000/08/02)


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