『市民ケーン』(1941年アメリカ作品)

NO PICTURE
原題/CITIZEN KANE
製作・監督・脚本/オーソン・ウェルズ
脚本/ハーマン・マンキーウィッツ
撮影/グレッグ・トーランド
音楽/バーナード・ハーマン
主演/オーソン・ウェルズ、ジョセフ・コットン、ドロシー・カミンガー、アラン・ラッド
白黒 119分
 若干25歳のオーソン・ウェルズが製作・監督・脚本・主演をこなした歴史的名作。「バラのつぼみ」という謎の言葉を残して死んだ新聞王ケーン。ジャーナリストたちがその言葉の意味を探って故人を知る人々に話を聞いていく。巧みすぎる構成。そしてあまりにも有名なパンフォーカスの創造…。
 パンフォーカスというのは、ひとつの構図の中で、画面手前から画面奥まですべてにピントを合わせ、画面の手前と奥で並行して進む複数のドラマが、あるときは対比、あるときは相乗の意味を持って統一したアンサンブルを奏でる表現手法のこと。この『市民ケーン』において初めて技法として確立したといわれている。技術的にはカメラのレンズの絞りを通常の撮影よりはるかに絞り込む必要があり、そのためには膨大な照明装置を必要とする。若いウェルズにそんな冒険をさせてしまったハリウッドの懐の深さにも感心しますね。
 今回、10数年ぶりに再見して、「バラのつぼみ」の謎に関わるヒントが、記憶していた以上に作品の随所に散りばめられていたことがわかった。ジャーナリストたちにはまだまだ「バラのつぼみ」の謎を解き明かすチャンスがあったのである。しかし結局、人の心の中は最後までわからないということか。今、ぼくはある作家とその作品に関して長期取材を行っているんだけど、やはりその人の心の奥に秘められた本当の想いにまでは到達できないのかもしれないな。

(1999/04/21)


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